眠りを極める

人間はなぜ眠る?

快眠、快食、快便、そして適度な運動。健康な体づくりに関心を持っている人なら、これらを心がけたいと思っている、または実行しているでしょう。毎日の生活の中で、食事に気をつかったり、ある程度体を動かしたりするのは、たいてい努力すればできることですが、睡眠はそれができません。どんなに努力しようとも思いどおりにならないのが睡眠なのです。

そもそも、人間はなぜ眠るのか、眠らなければならないのか、考えたことはありますか?

社会は目まぐるしく進歩し、多くの物事が合理化されているこの時代において、睡眠時間だけは昔と変わらず確保しなければならないというのは、なんだか不合理ですが、研究者の間でも、睡眠についてはまだわからないことがたくさんあるそうです。

睡眠は、動物にとってムダな動きを抑える手段として進化してきたと考えられています。動かなくてよいのであれば新陳代謝を減らして、エネルギーを節約することができます。

熱帯の森林に生息し、ほとんど動かずに、動いてもゆっくりした動作から、怠け者という呼び名がついたナマケモノは、実はエネルギーの消耗を防ぐためにいつもじっとしているのです。怠けているわけではなく、厳しい環境の中で生存の危機を感じ、そうしているということです。人間を含めた生物にとって、エネルギー問題は生命に関わる大切なものですが、何不自由なく生活している多くの現代人には、理解が難しいでしょう。

どうして人間は眠るのかという問いには、疲れたから眠るという答えが一般的です。よい眠りには、脳や神経の疲れを回復させる働きがあるのがわかっています。睡眠は疲れた頭と体を回復することができる唯一の方法です。

どれくらい眠らないでいられるか

睡眠は、私たちが生きていくうえでとても大切なものですが、それでは、眠らないでいるとどうなるでしょう。そして、どれくらい眠らずにいられるのでしょうか?

世界では、なんと200時間以上も睡眠をとらなかった人が、専門家により実験で数人確認されているそうですが、どの人の場合でも、イライラして集中力が無くなったり、幻覚があらわれたとの報告がされています。このことから、睡眠のいちばん大事な役割は脳を休ませることだということがわかります。よく、2日や3日眠らなくても大丈夫。なんていわれますが、それから先も眠らずにいると、脳があまりにも疲れすぎて脳細胞が壊れる危険があります。睡眠は、それを防ぐ安全装置のように働いているのです。眠らなくても、体のほうは動かずにいれば休まりますが、神経のほうは休まりません。

実験では、3日目ぐらいから被験者が目を開けていても、マイクロスリープと呼ばれるとても短い睡眠の脳波が見られ、実際には、脳は瞬間的に眠っていたこともわかりました。

α波が眠りをいざなう

α(アルファ)波という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、ストレス社会で頑張る現代人の救世主のように考えられ、広く知られるようになりました。

アルファ波は、人間の脳波の波形のひとつで、大脳皮質の脳細胞の活動が低下したときにあらわれるものだといわれています。それは睡眠時ではなく覚醒時の脳波なのですが、瞑想状態のときなど、精神的・肉体的にもとてもリラックスした状態で出ます。

気持ちよく眠りにつくには、リラックスすることが大切です。脳が緊張していたのでは布団に入ってもなかなか眠れないのです。

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