眠りを極める

脳波から見た、 入眠〜起床のベストパターン

レム睡眠 と ノンレム睡眠 は 90分サイクル

「 ノンレム睡眠 」と「 レム睡眠 」。もう知らない人はいないというくらい、知名度の高い言葉かもしれませんが、ここで簡単に解説しておきましょう。

「レム睡眠」の「レム( REM )」は、急速眼球運動の略語です。睡眠中、目がキョロキョロ素早く動いている状態で、筋肉の緊張はまったくありません。
したがって、レム睡眠中に間違って目が覚めてしまうと、からだはまったくいうことをきかない「金縛り」になります。

「ノンレム睡眠」は、その名のとおり、レム睡眠以外の睡眠状態のことです。睡眠の深さが軽い軽睡眠から、どっぷり深い深睡眠まで、ノンレム睡眠に含まれます。
「ノンレム睡眠」「レム睡眠」という言葉が知られるようになってきたのは、書店にたくさん並んでいる脳科学本や、テレビやネットの健康系コンテンツのおかげだと思います。

ためになる本も多い反面、その中にはいくつか「あやしい知識」「以前はそう考えられていたが、最新の研究ではちょっと違ってるよ」というものもあります。その中のひとつ、「睡眠90分サイクル説」について考えてみましょう。

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」は交互に現われ、だいたい90分のサイクルで繰り返されるといわれています。この事実はかなり専門的な知識と思い込んでいたのですが、最近あるビジネス書に面白い記事を見つけました。「睡眠時間を90分の倍数になるよう心がけている」、「睡眠時間が90分の倍数になるようにアラームの設定をしている」という内容です。

おそらく深い睡眠中にアラームが鳴ってたたき起こされ、頭がしばらくボーッとする現象を避けたいという、合理的な考えによるものだと思います。

ひとはそんなに正確なサイクルで眠ることはできない

結論からいうと、このノンレム、レム睡眠サイクルがきっちリ90分間隔で進むことは、ありえないといっていいくらい可能性が低い現象です。

具体的に検証してみましょう。まず、おおよその睡眠時聞から考えてみます。7時間前後の睡眠が一般向けベスト睡眠時間とすると、90分サイクル説に基づけば、90分×5=450分( =7.5時間)が妥当な睡眠時間となります。

次に寝付くまでの時間です。ベッドに入って電気を消して、寝付くのにどれくらいの時間がかかっていますか?
意外と答えられない人が多いのですが、23時に消灯したとして、寝付くまでに、たとえば10分かかったとしましょう。23時10分から7時間半の睡眠をとったとすると、起床時間は6時40分。

この時間にアラームセット! が理想です。ただし、机上の仮説どおりにならないのは、ビジネスも臨床現場も夜の睡眠も同じです。

まず寝付くまでの時間は、正確には把握できないことが多いもの。寝付くまでの時間が10分ずれても、サイクルは異なってきます。しかも睡眠の深さも一定のサイクルで変動するわけではなく、深いノンレム睡眠は睡眠前半に、レム睡眠は目覚め前の夜明けに多くなるなど、特定のパターンがあります。さらに夜中のトイレ、パートナーのいびき・歯ぎしり、朝の日差しの差し具合などなど、睡眠には予定外のアクシデントが案外影響してくるものです。

大学の講義の時間も90分、テレビのドキュメンタリーも約90分。90分が人間の生活リズムの区切り、ということはいえるかもしれません。ただ、90分に近いことは事実ですが、きっちり90分ということはありえない話です。

人間は、朝は何も考えずとも、レム睡眠と軽睡眠の時間が多くなっていて、起床する準備が自然に整うようにできているのです。

正しい睡眠リズムが安定した睡眠につながる

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