睡眠とアルコール

お酒の飲み過ぎで睡眠の質が落ちる

快眠を得たい人にとっては、アルコールの摂取は微妙な問題となります。神経の高ぶりを静め、気持ちをほぐす目的での少しの量の晩酌やナイトキャップ程度なら眠り薬のような役目を果たしますが、飲み過ぎてしまうと逆に睡眠を妨げてしまいます。アルコールの力を借りて無理矢理眠ったとしても、それは脳がマヒしているだけで、疲労回復という睡眠本来の効果は期待できません。これでは、質の悪い睡眠しかとれないということになります。また、一般にアルコールの摂取では体の中の水分が奪われます。飲み過ぎて、のどが渇いて夜中に目が覚めたという人は多いでしょう。ビールなら、利尿作用が強くトイレに行く回数も増えます。

ナイトキャップも、注意していないとお酒の量が増えてしまい、アルコール依存症への道を歩む危険性もあるかもしれません。最初はおちょこ一杯だった量が、コップ一杯になり、次には二杯になって、とだんだん増えていき、ついにはお酒を飲まないと眠れないようになってしまう可能性があります。アルコール依存症についてはこちら

アルコールの大半(90%以上)は、肝臓で処理されます。肝臓が1時間に代謝処理できるアルコール量は、6~9グラム程度です。ビールなら大瓶3分の1本、3分の1合です。時間、ペース、そして自分がお酒を飲む日の体調などを考えながら飲むことが大切です。

もし、既に年単位で寝る前にお酒を飲む習慣がついてしまっている人は、すぐにお酒をやめると不眠が深刻化するケースもあります。まず疲れた肝臓をしっかり元気にしてからお酒をやめるために生活習慣をかえていくのがいいでしょう。
肝臓を元気にして、その後から少量ずつお酒を減らしていく方法がベストです。アルコールで心地よく眠れていると勘違いしているのは本人だけで実際には、熟睡できていないのです。

アルコール依存で睡眠状態が異常になる

最近では、男性ばかりでなく女性のアルコール依存症患者も増えているといいます。
アルコールというのは、飲んでいるうちに強くなるものです。それを自分でコントロールすることができないと、アルコール依存症に陥ることがあります。そして依存症になると、意志が弱くなったり判断力が低下したりして飲酒量もますます増え、悪循環となります。こうしたアルコール依存症の精神障害で一番特徴的なのは、せん妄状態です。せん妄状態というのは、意識が混濁して、幻覚を見たり錯覚を起こしたりと、現実の感覚が無くなってしまうような状態のことをいいます。

せん妄状態に陥ったアルコール依存症患者の夜間の睡眠を観察した例があり、途中で何度も覚醒するとても不安定な眠りが見られました。レム睡眠が減少し、深い眠りのノンレム睡眠も無くなっていたようです。またレム睡眠のときの急速眼球運動があるのに、筋緊張が残っていたりと異常な状態になっています。そのとき患者は、鮮明な夢をみて、それに反応して叫んだり、しきりに寝ごとを言ったりすることがあるのです。