寝る前のお酒がデメリットばかりに感じられるのは、実は「量」と「タイミング」が大きなポイントです。寝る前にお酒を飲む“寝酒”は、一時的に寝つきが良くなるように感じられるものの、実際には多くの悪影響が潜んでおり、睡眠の質を下げたり健康を損ねたりする可能性があります。
寝る前のお酒のデメリット
寝酒には一見リラックス効果がありますが、長期的には睡眠の質を大きく下げ、身体にも心にも悪い影響を及ぼすリスクがあります。主なデメリットは以下の通りです。
1. 睡眠の質が低下する
レム睡眠の減少・サイクルの乱れ
アルコールはレム睡眠(夢を見る睡眠段階)を抑制し、結果として睡眠全体のリズムを崩してしまいます。深い眠りが得られにくくなり、睡眠の回復効果も弱まります。
中途覚醒が増える
アルコールの分解過程で発生するアセトアルデヒドには覚醒作用があるため、夜中に目が覚めやすくなり、再入眠が困難になることがあります。
体温上昇と寝汗
アルコール代謝により体温が上がることで、寝汗をかきやすくなり、睡眠の快適さを損なう原因となります。
いびきや無呼吸の悪化
筋肉を弛緩させる作用によって気道が狭まり、いびきがひどくなったり、睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化することがあります。
2. 翌朝の体調不良
二日酔い
睡眠中のアルコール分解が不完全なままだと、頭痛や倦怠感、吐き気、動悸といった二日酔い症状が残りやすくなります。睡眠の質の低下もこれらの不調を助長します。
3. アルコール依存のリスク
耐性の形成
寝酒が続くと、同じ効果を得るために飲酒量が増えやすくなります。
依存症への進行
「お酒がないと眠れない」と感じ始めたら、それはアルコール依存の初期サインかもしれません。
離脱症状の出現
急に飲酒をやめると、不眠や手の震え、自律神経の不調といった離脱症状が現れ、再飲酒を引き起こす可能性もあります。
4. その他の健康リスク
うつ症状の悪化
一時的に気分が楽になることもありますが、感情の不安定さや神経過敏を引き起こし、うつ状態を悪化させることも。
疾患リスクの上昇
長期的な多量飲酒は、肝疾患・高血圧・心疾患・胃腸障害・がんなど、さまざまな病気のリスクを高めるとされています。
寝る前のお酒がデメリットにならないようにするには
1. 飲酒のタイミングと量を見直す
就寝3〜4時間前には飲酒を終える
アルコールが分解されるまで時間がかかるため、寝る直前の飲酒は避けましょう。少なくとも3〜4時間前に切り上げるのが理想的です。
飲みすぎないように注意する
適量を守ることが何より大切です。厚生労働省が示す「節度ある飲酒」の目安は、1日あたり純アルコール約20g(ビール中瓶1本、日本酒1合)です。
チェイサー(お水)を飲む
アルコールの利尿作用で脱水が進みやすいため、水を併用して飲むことで、体調不良や二日酔いのリスクを減らせます。
2. 睡眠の質を高める生活習慣を取り入れる
寝酒に頼らず、自然に眠れる習慣を身につけましょう。
就寝・起床の時間を毎日一定にする
体内時計が整い、自然と眠くなるリズムがつかめるようになります。
寝室環境を快適に保つ
暗さ・静かさ・温度・湿度などに配慮し、眠りやすい空間を整えましょう。自分に合った寝具も重要です。
リラックス習慣を作る
・入浴: 寝る90〜120分前に38〜40℃のぬるめのお湯にゆっくり浸かりましょう。
・軽いストレッチ: 体をほぐすことで緊張が和らぎます。
・ブルーライトを避ける: スマホやPCの使用は就寝1時間前には控えるのがベター。
・温かいノンカフェイン飲料: ハーブティーやホットミルクなどを取り入れると、心身が温まりやすくなります。
・アロマや音楽: 好みの香りや心地よい音でリラックス効果を高めましょう。
・深呼吸・瞑想: 呼吸を整えるだけでも入眠しやすくなります。
3. アルコール依存への理解と対策
「飲まないと眠れない」は危険信号
それはすでに依存の兆候かもしれません。放置すると悪化し、抜け出しにくくなります。
不眠が続くなら専門医に相談を
睡眠外来や精神科など、適切な機関に相談することで、根本的な解決につながります。
寝酒は一時的な眠気を誘う手段に過ぎず、長期的には睡眠の質や健康を害する恐れがあります。快適な眠りのためには、アルコールに頼らない健やかな習慣を身につけていくことが大切です。