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もっと快適にもっと心地よく眠るための情報。 快眠のコツ を知って、眠りを極める。 賢い眠り方 についての知識。

寝酒はほどほどに 寝付きはよくても眠りを浅くする

深酒のあとは、なぜ、異常に早く目が覚めてしまうのでしょう?

アルコールが好きな人はどういったお酒を飲んでいるでしょうか。ビールからワイン、日本酒、焼酎、カクテルなど、幅広く楽しめるお酒がありますが、アルコールが睡眠に与える影響について考えてみたいと思います。

「 寝酒 」の習慣がある人はいるでしょうか。残念ながら、お酒は、睡眠にはよい効果をもたらさないようです。 睡眠とアルコール でも少し触れていますが、アルコールは睡眠にいい影響を与えません。

2001年にフランスの製薬会社サノフィ・アベンティス社がおこなった国際調査によれば、日本人の不眠の対策としてはアルコールが第1 位で19.5 % でした。約2 割近くの人が、寝酒をして寝ていることになります。

欧米では寝酒のことを「 ナイト・キャップ 」といい、ブランデーやリキュールなどの高アルコール度数のお酒がよく使われます。ちょっとだけ飲むにはいいお酒ですが、日本では高アルコール度数のお酒は、あまり見かけません。日本産のブランデーがあったとしても、寝酒は睡眠全体のことを考えると、やはりおすすめできません。

寝付きは確かによくなりますが、アルコールはからだの中で比較的早く分解・代謝されるため、睡眠の途中でアルコール不足で落ち着かなくなってしまう状態、いわゆる「離脱症状」が出てしまうのです。

その結果、深い睡眠が少なくなり、また、アルコールのために睡眠前半では抑制されていたレム睡眠が、夜明けにリバウンドして出現量が増加します。お酒を飲んだ次の朝、早く目覚めてしまうのは、そのためだと考えられます。アルコールのからだへの影響もバカにできません。

アルコールは利尿作用があるので、夜中のトイレの原因になってしまいます。これも睡眠の大きな障害となります。ちなみに、「飲んだ夜だけいびきが大きい」といわれたことのあるかたもいらっしやると思いますが、これは、アルコールで舌の付け根の筋肉の緊張がほぐれ過ぎてしまい、結果的に喉の空気の通り道をふさいでいびきが大きくなる、という現象です。

当然睡眠は浅くなるので、次の日はボーッとしている時間が長くなります。

睡眠にとって、アルコールはいいことなし

睡眠に関してだけいうと、アルコールは体に悪いことばかりです。しかしハーバード大学公衆衛生大学院の研究では、まったく飲まない、飲めない人や大酒飲みの人よりも、適度にお酒を飲む人のほうが、生存率が高いという報告を出しています。

赤ワインに含まれるポリフェノールやレスベラトロールは、動脈硬化予防に効果的であることが知られています。白ワインにも、整腸効果があるといわれています。日本酒を楽しむ人は肌がきれいとよくいわれますが、麹などの日本酒の成分に美肌効果があるのかもしれません。

おそらく適度にアルコールを摂っている人は、社会的なコミュニケーションも良好であり、「みんなで語らいながら楽しいお酒」をエンジョイしていることが多いのではと思います。

そうした飲み会のメンタルへのプラス効果もあるとは思いますが、逆にいえば、メンタルにとっても睡眠にとっても、無計画でなにをどれくらい飲んだかわからなくなるような二次会への参加はおすすめできません。

楽しい仲間、おいしい食事、適切な量のおいしいお酒、そして時間を守って家に帰って寝るのが、睡眠への悪影響も比較的少なく、ビジネス的にも健康にもおすすめというわけです。

必須アミノ酸を多く摂れる大豆、魚介類、肉類、乳製品は、睡眠には効果大

必須アミノ酸からメラトニンができる

食事メニューの話に入る前に、もう一度、眠りのホルモン・メラトニンについてです。メラトニンは夜になると、脳の松果体から体内に分泌されます。

アメリカのドラッグストアではサプリメントとして普通に売っています。渡米したときに記念に買ってみたことがりますが。価格は7ドルくらいでした。
睡眠ホルモン「メラトニン」

メラトニンが睡眠薬や胃薬と違うところは、人間のからだの中で自然に作られる物質であるということです。もちろん製薬会社で合成して生産することは可能なのですが。では、人間のからだの中でメラトニンが作られるためには、なにが必要なのでしょうか?

メラトニンのもとになるのは、抑うつや不安に関係する神経伝達物質、「セロトニン」です。化学の教科書では、メラトニンはセロトニンから作られると説明されています。

セロトニンは昼間に分泌されるのですが、昼間にセロトニンの分泌量が少ないと、夜に作られるメラトニンの量が少なくなってしまいます。つまり、「セロトニン不足=メラトニン不足」となってしまうわけです。

大豆、魚介類、肉類、チーズは、よい睡眠をつくる

では、セロトニンはなにからできているのか?答えは、トリプトファンというアアミノ酸です。このトリプトファンは、必須アミノ酸と呼ばれています。なぜ必須かというと、自力で体内で作り出すことができず、食べたり飲んだりして外から補給しないといけない物質だからです。

したがって、トリプトファンを多く含む食べ物が、睡眠にいいわけです。トリプトファンは、大豆、魚介類、肉頬などのタンパク質、チーズなどの乳製品にたくきん含まれています。セロトニンを作るときに働くビタミンB12も、これらの食品に多く含まれています。
睡眠とビタミンの関連性

バランスの取れた食事でコレステロールを減らす

しかし、納豆や豆腐ばかり食べていれぼ眠れるようになる、というわけではありません。あくまでバランスの取れた食事が大切です。

肉類や乳製品ばかり食べていたのでは、コレステロール値が上昇します。「大丈夫、オレは日本食中心だ」といっても、醤油や味噌、漬け物など塩分が多いと、高血圧になってしまいます。

コレステロールと高血圧は動脈硬化の大きな原因になります。動脈硬化は、心臓だけでなく脳の動脈も硬化させてボロボロにしかねません。大豆を食べればすぐに眠りに落ちる、というわけにはいきませんが、食事は長期的に見ると、睡眠にじわじわ効いてきます。

さらに、メラトニンの分泌は、子どものころに多いことがわかっています。したがって、子どもの夜更かし、偏食が重大なダメージを残すことにも注意すべきでしょう。

子どものころの夜ふかしがメラトニンとセロトニンの分泌を阻害し、キレる人間になりやすいなどの致命的で回復できないダメージを残す、という仮説を提示しています。食育は眠りの質を上げるために大切な要素であることはもちろん、健康や教育、ビジネスにもたいへん重要であることを強調しておきたいと思います。

ベストな睡眠のためには2週間くらいの計画が必要

よい睡眠リズムをつくるには休日の2日間が大切

会社などへお勤めしている人には、仕事をする「オン」の日と、休む「オフ」の日の2種類があります。月曜から金曜日がオン、土日がオフという生活スタイルが多いでしょうが、平日休みのシフトの人、あるいは主婦のようにオンとオフをはっきりさせにくい生活スタイルの人もいるでしょう。

「 ベストな睡眠リズム 」は、2、3 日の単位で考えられるべきものではありません。時差ぼけの回復に数日はかかるように、人間の睡眠・覚醒リズムの修正には1 週間はかかるからです。週末の夜更かしや寝坊などを考慮に入れれば、さらに余裕を持って、2 週間を単位に考えてみるのがいいのではないかと思います。

リズムの維持の鍵はオフの休日にあります。月曜日がブルー過ぎる、週の真ん中の水曜日が疲れる、金曜日になるともうへトヘト。これらの不調は、体内リズムの乱れが大きく関与しています。リズムが大きく乱れをきたすのは、なんといっても休日です。

「昼過ぎまで寝坊してしまった」「次の日休みなので、深夜までDVDを見てしまった」「つい気が緩んで、週末にお酒を飲み過ぎてしまった」、こういったことに心当たりはありませんか? こうした週末の過ごし方によって、体内リズムが夜型に変わるか変わらないかのうちに、月~金曜日に仕事のある人は月曜を迎えます。つまり月曜日に強引な朝型へのリズム調整が行われるわけですが、これはいわば「朝型への時差ぼけ」をつくっているともいえます。疲労が週の初めから蓄積しはじめてしまうのは無理もないことです。

週末に平日と同じ時刻に起きろとまではいいませんが、寝坊は平日+2時間までと決めておきましょう。平日が7時起きの人なら、休日も9時までにはなんとか起きることです。

さらに、曜日ごとに過ごし方のコツもあります。週の初めには、無理をせず抑え気味にして、早めに仕事を終えたほうがいいでしょう。飲み会を月曜日に設定するのは、体力自慢ならばともかく、あまりおすすめできたものではありません。

定時退社やノー残業デーを水曜日に設定している企業や官庁がいちぼん多いのですが、週の真ん中には、中休みの日程を入れておくのも、1 週間を乗り切る知恵でしょう。

自分の睡眠不足に無自覚な人が増えている

睡眠パターンを作っていくうえでは、休日の睡眠・覚醒リズムをコントロールすることが大切です。さらにそのうえで、働く「オン」の日に関しては、「日中の眠気」の程度に自覚的になりましょう。会議やデスクでつい居眠りしてしまう…この程度の人ならば、たくさんいます。

ただ、一般的には居眠りできそうもないシチュエーション、つまり、運転中や誰かと喋っている最中にあやうく眠るところだったとか、眠気がひどくてものを考えるどころではない、というように、仕事も含めて日常生活に重大な支障を生じるようになってきた場合は、自分の睡眠・覚醒のパターンを見直す必要があるかと思います。

こうした眠気の背後にほ、あとで説明するような、睡眠時無呼吸症候群などの病気が隠れている場合ももちろんあります。しかし現代人で目立つのは、自分の睡眠不足に気がついていない「行動起因性睡眠不足症候群」です。

「行動起因性睡眠不足症候群」とは、残業や勉強、ないしは夜のネットサーフィンなどといった行動によって睡眠不足に陥っていて、日中の眠気や頭重感、思考力低下などの症状が現れている状態をいいます。

にもかかわらず自分では症状に無自覚で、「ほかの人も似たようなものだろう」「自分としては6時間は寝ているので大丈夫」などと、睡眠不足に気がつかないか、目をそらして否認しているかのどちらかのパターンが多いようです。

睡眠を記録する装置を2 週間装着して調べる

睡眠・覚醒リズムを自動的に記録できる「 ライフコーダ 」を2 週間装着してもらい、睡眠・覚醒リズムを調べます。昼間の眠気に悩んでいる人は、長い通勤時間で遅い就寝、そして早い起床時刻のパターンになっていて、夜間の睡眠時間が4~5時間程度になってしまっていることが非常に多く見られます。

そういう人は、休日に寝不足を補うべく、午前中はほとんど寝ているというのも、バッチリ記録されています。本人に「実はあなた、睡眠不足ですよ」とデータを突きつけ、自分の睡眠状況を知ってもらうことが、いちばんの治療法です。睡眠薬などは不要です。

深夜1 時に寝ている人ならば「0時から6時まで睡眠を固定しましょう」、「休日の寝坊は8時までにしましょう」、こういった指導内容を守るだけでも、日中のパフォーマンスはかなり違ってきます。それでも改善しない場合は、 睡眠時無呼吸症候群 など、ほかの 睡眠障害 がないかを調べていくことになります。