必須アミノ酸を多く摂れる大豆、魚介類、肉類、乳製品は、睡眠には効果大

必須アミノ酸からメラトニンができる

食事メニューの話に入る前に、もう一度、眠りのホルモン・メラトニンについてです。メラトニンは夜になると、脳の松果体から体内に分泌されます。

アメリカのドラッグストアではサプリメントとして普通に売っています。渡米したときに記念に買ってみたことがりますが。価格は7ドルくらいでした。
睡眠ホルモン「メラトニン」

メラトニンが睡眠薬や胃薬と違うところは、人間のからだの中で自然に作られる物質であるということです。もちろん製薬会社で合成して生産することは可能なのですが。では、人間のからだの中でメラトニンが作られるためには、なにが必要なのでしょうか?

メラトニンのもとになるのは、抑うつや不安に関係する神経伝達物質、「セロトニン」です。化学の教科書では、メラトニンはセロトニンから作られると説明されています。

セロトニンは昼間に分泌されるのですが、昼間にセロトニンの分泌量が少ないと、夜に作られるメラトニンの量が少なくなってしまいます。つまり、「セロトニン不足=メラトニン不足」となってしまうわけです。

大豆、魚介類、肉類、チーズは、よい睡眠をつくる

では、セロトニンはなにからできているのか?答えは、トリプトファンというアアミノ酸です。このトリプトファンは、必須アミノ酸と呼ばれています。なぜ必須かというと、自力で体内で作り出すことができず、食べたり飲んだりして外から補給しないといけない物質だからです。

したがって、トリプトファンを多く含む食べ物が、睡眠にいいわけです。トリプトファンは、大豆、魚介類、肉頬などのタンパク質、チーズなどの乳製品にたくきん含まれています。セロトニンを作るときに働くビタミンB12も、これらの食品に多く含まれています。
睡眠とビタミンの関連性

バランスの取れた食事でコレステロールを減らす

しかし、納豆や豆腐ばかり食べていれぼ眠れるようになる、というわけではありません。あくまでバランスの取れた食事が大切です。

肉類や乳製品ばかり食べていたのでは、コレステロール値が上昇します。「大丈夫、オレは日本食中心だ」といっても、醤油や味噌、漬け物など塩分が多いと、高血圧になってしまいます。

コレステロールと高血圧は動脈硬化の大きな原因になります。動脈硬化は、心臓だけでなく脳の動脈も硬化させてボロボロにしかねません。大豆を食べればすぐに眠りに落ちる、というわけにはいきませんが、食事は長期的に見ると、睡眠にじわじわ効いてきます。

さらに、メラトニンの分泌は、子どものころに多いことがわかっています。したがって、子どもの夜更かし、偏食が重大なダメージを残すことにも注意すべきでしょう。

子どものころの夜ふかしがメラトニンとセロトニンの分泌を阻害し、キレる人間になりやすいなどの致命的で回復できないダメージを残す、という仮説を提示しています。食育は眠りの質を上げるために大切な要素であることはもちろん、健康や教育、ビジネスにもたいへん重要であることを強調しておきたいと思います。

ベストな睡眠のためには2週間くらいの計画が必要

よい睡眠リズムをつくるには休日の2日間が大切

会社などへお勤めしている人には、仕事をする「オン」の日と、休む「オフ」の日の2種類があります。月曜から金曜日がオン、土日がオフという生活スタイルが多いでしょうが、平日休みのシフトの人、あるいは主婦のようにオンとオフをはっきりさせにくい生活スタイルの人もいるでしょう。

「 ベストな睡眠リズム 」は、2、3 日の単位で考えられるべきものではありません。時差ぼけの回復に数日はかかるように、人間の睡眠・覚醒リズムの修正には1 週間はかかるからです。週末の夜更かしや寝坊などを考慮に入れれば、さらに余裕を持って、2 週間を単位に考えてみるのがいいのではないかと思います。

リズムの維持の鍵はオフの休日にあります。月曜日がブルー過ぎる、週の真ん中の水曜日が疲れる、金曜日になるともうへトヘト。これらの不調は、体内リズムの乱れが大きく関与しています。リズムが大きく乱れをきたすのは、なんといっても休日です。

「昼過ぎまで寝坊してしまった」「次の日休みなので、深夜までDVDを見てしまった」「つい気が緩んで、週末にお酒を飲み過ぎてしまった」、こういったことに心当たりはありませんか? こうした週末の過ごし方によって、体内リズムが夜型に変わるか変わらないかのうちに、月~金曜日に仕事のある人は月曜を迎えます。つまり月曜日に強引な朝型へのリズム調整が行われるわけですが、これはいわば「朝型への時差ぼけ」をつくっているともいえます。疲労が週の初めから蓄積しはじめてしまうのは無理もないことです。

週末に平日と同じ時刻に起きろとまではいいませんが、寝坊は平日+2時間までと決めておきましょう。平日が7時起きの人なら、休日も9時までにはなんとか起きることです。

さらに、曜日ごとに過ごし方のコツもあります。週の初めには、無理をせず抑え気味にして、早めに仕事を終えたほうがいいでしょう。飲み会を月曜日に設定するのは、体力自慢ならばともかく、あまりおすすめできたものではありません。

定時退社やノー残業デーを水曜日に設定している企業や官庁がいちぼん多いのですが、週の真ん中には、中休みの日程を入れておくのも、1 週間を乗り切る知恵でしょう。

自分の睡眠不足に無自覚な人が増えている

睡眠パターンを作っていくうえでは、休日の睡眠・覚醒リズムをコントロールすることが大切です。さらにそのうえで、働く「オン」の日に関しては、「日中の眠気」の程度に自覚的になりましょう。会議やデスクでつい居眠りしてしまう…この程度の人ならば、たくさんいます。

ただ、一般的には居眠りできそうもないシチュエーション、つまり、運転中や誰かと喋っている最中にあやうく眠るところだったとか、眠気がひどくてものを考えるどころではない、というように、仕事も含めて日常生活に重大な支障を生じるようになってきた場合は、自分の睡眠・覚醒のパターンを見直す必要があるかと思います。

こうした眠気の背後にほ、あとで説明するような、睡眠時無呼吸症候群などの病気が隠れている場合ももちろんあります。しかし現代人で目立つのは、自分の睡眠不足に気がついていない「行動起因性睡眠不足症候群」です。

「行動起因性睡眠不足症候群」とは、残業や勉強、ないしは夜のネットサーフィンなどといった行動によって睡眠不足に陥っていて、日中の眠気や頭重感、思考力低下などの症状が現れている状態をいいます。

にもかかわらず自分では症状に無自覚で、「ほかの人も似たようなものだろう」「自分としては6時間は寝ているので大丈夫」などと、睡眠不足に気がつかないか、目をそらして否認しているかのどちらかのパターンが多いようです。

睡眠を記録する装置を2 週間装着して調べる

睡眠・覚醒リズムを自動的に記録できる「 ライフコーダ 」を2 週間装着してもらい、睡眠・覚醒リズムを調べます。昼間の眠気に悩んでいる人は、長い通勤時間で遅い就寝、そして早い起床時刻のパターンになっていて、夜間の睡眠時間が4~5時間程度になってしまっていることが非常に多く見られます。

そういう人は、休日に寝不足を補うべく、午前中はほとんど寝ているというのも、バッチリ記録されています。本人に「実はあなた、睡眠不足ですよ」とデータを突きつけ、自分の睡眠状況を知ってもらうことが、いちばんの治療法です。睡眠薬などは不要です。

深夜1 時に寝ている人ならば「0時から6時まで睡眠を固定しましょう」、「休日の寝坊は8時までにしましょう」、こういった指導内容を守るだけでも、日中のパフォーマンスはかなり違ってきます。それでも改善しない場合は、 睡眠時無呼吸症候群 など、ほかの 睡眠障害 がないかを調べていくことになります。

体内時計の基本は1日25時間! リセットすれば健康な睡眠を取り戻せる

太陽の光は睡眠・覚醒のリズムに大きく影響します

目覚まし時計は、音でひとを刺激して覚醒させます。しかし、人間の睡眠と覚醒を刺激するのには、音よりも合理的な刺激があります。それが、「光」です。光、特に太陽光は、動物だけでなく人間の睡眠・覚醒パターンにも大きな影響を与えます。

光をうまく使いこなせば、よく眠れる、スッキリ目覚められるといった健康面だけでなく、勉強やビジネスを優位に進めることができます。

逆に、光を誤った時間帯に浴びてしまうと、眠りの妨げとなることもわかっています。まず、私たちがもともと持っている、からだのリズムから考えてみましょう。

「夏になると睡眠時間が短くなり、秋から冬になると睡眠時間が長くなる」「そうかもしれないな」と体験的に納得するかたも多いと思いますが、このことはいくつかの一般的な調査で裏付けられています。

夏、特に夏至あたりは夜明けの時間が早くなり日差しも強いので、寝ていられず自然に目が覚めてしまったという経験をしたかたも多いのではないでしょうか? 逆に冬は、朝とはいっても寒いし暗いしで、なかなか起きられませんよね。 人間の睡眠リズムは、からだの深部体温と関係しているのです。体温が高くなる午前・午後は覚醒、低くなる夜から未明は睡眠、というサイクルが一般的なパターンです。

光は乱れた睡眠のタイミングもリセットしてくれる

光は、このサイクルに影響を与えます。光には、睡眠のタイミングを調整するはたらきがあるのです。具体的にはどうなるか。朝日をたっぷりと浴びると、このサイクルが前倒しにされます。これによって体温が下がりはじめる時間が早くなります。

つまり、早く眠くなるということです。早寝早起きで、健康的な、いいパターンですね。逆に、夕方から夜に明るい光を浴びてしまうと、サイクルが遅れてしまいます。

体温がなかなか下がりにくくなる、これはなかなか寝付けなくなる、ということです。深夜の勉強や仕事にはいいのでしょうが、ちょっと不健康ともいえます。朝いきなり暗いところに入ってしまったり、あるい明るい光を浴びると、夜の睡眠は悪くなります。
これも経験的に納得がいくのではないでしょうか。臨床現場でも、不眠のかたには、朝の日光を浴びることをすすめています。

もともとの体内リズムは、なんと1日25時間!

光が睡眠のリズムを調節することには、いくつかの理由と科学的な根拠があります。人間の1日のリズム(概日リズム)は、24時間ではなく、それよりちょっと長い25 時間といわれています。

眠りのホルモン・メラトニンや元気のホルモン・コルチゾルも、1日のうちで周期的に分泌量が変動していて、これも前述したように光の影響を受けています。

光がない真っ暗な中では、もともとの体内リズムである25時間の周期が優位にはたらき、ちょっとずつ生活リズムがズレていきます。これを修正してくれるのが、光なのです。

光は、睡眠障害の治療にも使われています。秋や冬になると過眠になってしまって起きられない季節性うつ病の治療には、光療法が有効です。

先はどど紹介した、毎日寝付く時間が遅くなってしまう「睡眠相後退症候群」にも、光療法が効果的である場合があります。お年寄りの施設でときどき見られる、せん妄といって夜に不安や興奮を呈し不安定となる症状も、昼間に天井から太陽光の差すロビーで一定時間を過ごすと、発生率が低いという研究結果があります。

こうした光の持つ力は、睡眠障害だけではなく、日常の生活にも使えます。海外旅行や出張の際も、現地の朝の時間に合わせて光を浴びるのが効果的です。

夜に研究や仕事、勉強をしたいというかたは、夕方から夜にかけて明るいライトの前で光を浴びると、覚醒レベルが上がります。

たとえば、ボストンは冬が長いので、秋冬の夜長の勉強用に「ハッピー・ライト」という光療法グッズで光を浴びている方もいます。

先ほどの季節性うつ病の治療用異なので、「ハッピー・ライト」というネーミングなのでしょう。研究や論文執筆での能率アップに使っていたのでしょうが、しかし確実に夜の眠りが浅くなるので、本当にハッピーかは疑問です。こうした「奥の手」は、ここぞというときだけ使ったほうが、ハッピーだと思います。

快眠ぐっすり酵素「セロトアルファ」で睡眠薬が不要に